放浪カモメ


そして、2人はホテルを出ると近くのファミリーレストランで朝食を取ることにした。

鴨居は名前も知らない女とレストランで食事なんて不思議な感覚になっていた。


「いらっしゃいませ。ご注文の方はお決まりでしょうか?」

二日酔いの激しい鴨居は朝食を取る気力も無くコーヒーだけを頼んだ。

「カモ君、コーヒーだけ?なに朝食べない派なの?」

そんな鴨居とは打って変わって、その女は朝からだというのにフレンチトーストとシーザーサラダを食べ、そしてコーンポタージュを頼んだ。

「うん…二日酔いがキツくて食う気になれない。いつもはちゃんと朝も食ってるけどね。」

「ふーん。まぁ、合コンの席であれだけ飲めばそうなるか。」

そこでようやく鴨居は昨日、自分が合コンに参加していたことを思い出す。

「てことは、君も合コンに参加してたの?」

温かいコーヒーを無糖のまま飲み、鴨居は尋ねた。

「君。って止めようよ。私の名前は大川 美鈴(おおかわ みすず)。」

大川はにっこりと笑うと、鴨居をジーッと見つめる。


そう。「言い直せ」という合図である。

「あー…大川さんは」

「美鈴ちゃん。」

名字で呼ぼうとしたら、下の名前で呼べ、と言葉を遮られてしまった。

鴨居はため息をついて、希望どおりに言い直す。

「美鈴ちゃんは、あの合コンに参加してたの?」



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