放浪カモメ
鴨居はトボトボと窓際の日差しの強い席に座る。
試しにカレーを一口。
「うわ、辛っ。」
ヒリヒリとする舌を出して冷やしながら、マヨネーズをカレーにかけスプーンで雑に混ぜ合わせた。
いつもだったら、カレーのスパイシーな香りに一見ミスマッチなマヨネーズの濃厚かつ酸っぱい匂いが混ざり合うと、がっつかずにはいられないのだが。
鴨居のスプーンが口へと運ばれることはなかった。
「新田くん…ショックだよな?そりゃそうだろ、フラれ……」
(フラれたらショックに決まってる……?だったら早苗ちゃんは?)
ズキンと胸が痛む。
「オレ……どうすれば良いんだよ。」
グッと握り締めた拳。
自分が熱くなっても仕方がないと、拳をゆっくりと開く。
すると昨日の佐野の言葉が鮮明によみがえってきた。
『普通に接してやればいいんじゃないか?』
大きく深呼吸をすると、まるで賞金か賞品でもかかった早食い大会の如く、一気にカレーライスを口にほうばると水で流し込んだ。
「うん。普通に、普通に接すれば良いんだ。」