放浪カモメ
カタカタとキーボードを叩く音が研究室にこだまする。
佐野は一服のために手を止めると、外を見た。
「普通に接してやれば良い……か。アタシも意地が悪いな。」
はぁ。と吐いた息が白い靄となり天井に流れていく。
「告白は今までの関係を壊して、更に先の関係を築く為の行為だ。そんな"不自然"なことをされた後、今まで通りになんてしたら"不自然"極まりないのにな。」
タバコの灰が連なって、重みで零れようとしている。
「避けたりもするだろう。気遣いもするだろう。そうやって今まで通り普通になんて接しないこと――それが"普通"なんだよな。」
哀しげに笑うとタバコに気付き、佐野はポンポンと杯を落とした。
「これも勉強だよ若人達。傷ついて傷つけられて、また成長するんだな。」
晴れやかな日差し。
暖かな空気はそんな若人を優しく包み込んでいく。