放浪カモメ
手に取った枝豆を手でいじくり、それを見下ろす鴨居。

そんな鴨居を見て杉宮は続けた。

「先生の言った『普通にしてやれ』ってのはさ。なにも『無理に今まで通りに接してやれ』って意味じゃないんじゃないかな。」

鴨居は杉宮の言葉を自分なりに整理してみる。

しばらく二人が黙り込んでいると、どこかの看板が風で押し倒されたのだろう。

突然『ガシャン』という音が外から聞こえた。

「先生はこうなることが分かっていて。二人から距離を置くのが自然……普通なんだ。と言いたかったんですね…」

杉宮はそう言った鴨居をチラと見ると、冷めてしまった焼き鳥を鴨居に渡した。

鴨居には分かった、それは「その通りだよ」という杉宮の無言の返事なのだと。





本当は気付いていたんだ

最初から。

でも気付かないフリをしていた

告白ってヤツはきっと

良い意味でも――

悪い意味でも――

今までの関係を壊す。

そういう儀式なのだ。



そんな非自然な儀式の中で

自然な行動をと 

思ったところで 

非自然の中で自然な行動を取ることこそが――

不自然だったのだ。


そう――

痛感させられとしまった。



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