放浪カモメ
鴨居と別れた後、杉宮はとある病院の一室を訪れていた。
「そうか、カモくんも難しい年ごろだからね。要がしっかり支えてあげなくちゃならないね。」
優しい。という言葉は彼の為にあるのではないか、そう思うほど綺麗な笑顔をした青年。
「うん、そうだね。それより身体は大丈夫なの?」
「要には分からない?こんなに僕の身体に力がみなぎっているのは、久しぶりなんだ。これも最近ずっと僕の病室に顔を出してくれている要のおかげだね。」
杉宮はやわらかな表情をしていたが、何だか不安そうな顔をしている。
「昨日さ……親父が来てたよね?」
杉宮の言葉に初めてその青年は顔をしかめた。
「要や樹が心配することじゃないよ。僕の病気さえ治れば解決する問題だ。」
「親父の跡取りなんてどうでも良いじゃないか。俺と一緒に海外へ行って安静に暮らそうよ。」
青年はゆっくりと首をふる。
「静(しずか)兄さん……」