放浪カモメ
鴨居はその笑顔に不安を感じて、真剣に何かを思い出そうとした。
自分の知り合いであの有名な慶大に通う人物。
そして、ある一人の女性だけが浮かび上がり、冷や汗が背中を伝った。
「もしかして…真希(まき)の知り合い?」
鴨居の言葉を聞くやいなや大川は満面の笑みを浮かべた。
「大正解。私はカモ君の恋人の山下 真希の友達でーす。」
最悪。ただその一言が鴨居の頭を支配した。
最近はあまり会っていないからといって、まさか彼女の友達と一夜を過ごしてしまうなんて。
間違いました。じゃ済まない話だ。
鴨居は胸焼けを忘れてしまえるほどに頭が痛くなるのを感じた。
「あ、その。このことは真希には…」
「分かってるってぇ。昨日のことは私とカモ君だけのヒ・ミ・ツだよ。」
何故だろう鴨居は、その言葉に妙な不安を感じてならないのだった。