放浪カモメ
鴨居は水だけで洗ったTシャツをそのまま着て、真夏の焼け付くような日差しにあてる。
真夏の空は自然の乾燥機の様で、すぐにTシャツを乾かしてくれた。
「さて、これからどうしよう……かな?」
何処か遠くで僕が来るのを待ってるのでは……?
その感覚に身を任せて出てきてしまったので、ちゃんとした目的地はなかった。
「遠く……そうだ、とりあえず遠くまで走ろう。」
そうして鴨居は行く宛てもないままに北を目指して走りだすのだった。
千葉から栃木に行ったのは実家に寄るためだった。
そこで両親に色々と経緯を話し、心配しないようにと言った。
『お願いだから無事に帰ってきて。』
そう言った母の心配そうな顔が頭の中にしみ込んで
胸の辺りに深く沈んで離れようとしない。