放浪カモメ
翌日の明朝。
鴨居の傍で何やら怪しげにごそごそと動く人影があった。
「ん、んー?」
気配に気付いたのか鴨居がムクリと起き上がると、目の前には青いジャージに青い帽子をかぶった、髭もじゃもじゃのおじさんがいた。
しかも何やら鴨居のカバンの中を物色している模様。
「…………あ。」
「…………。」
しばらく見つめ合う二人。
どうやら二人とも予想外の展開に言葉を失っているらしい。
困り果てたおじさんが、フケのたまった頭をボリボリかきながら言う。
「お、おう。よく眠れたかい?☆」
まだ寝呆けている鴨居。
「あ、はい。これはどうもご親切に……ぃ?」
ようやく違和感を感じ、辺りをキョロキョロと見回す。
河川敷。早朝。布団は新聞紙。
朝起きたら青い髭もじゃおじさん。びっくり。丁寧な挨拶。お礼言う……
「って、人のカバンあさって何してんですかーーっ!!」
叫ぶ鴨居。
おじさんはビックリしすぎて足が固まっている。
「ほ、ほらアレだよ。おめぇさんが起きるまでに、荷物の整理しといてやろーと思ってよ。へへ。」
何とつまらない言い訳であろうか。
そして何と胡散臭い笑顔か。
「へへ。で誤魔化されるわけないでしょう!!」
その後もおじさんの下手な言い訳と、どうしても鬼になりきれない鴨居との問答が、小鳥のさえずり響き渡る河川敷に不協和音の如く響き渡りましたとさ☆