放浪カモメ

電話

もう日も暮れた頃。

背の低い金髪の少年が、姉と一緒に住んでいる家に帰宅しようとしていた。

「はぁ、疲れた。サークルの女の子を家に送るんもしんどいもんやな。」

金メッキがはげかけている車のキーホルダーをつけた、部屋の鍵を差し込むと鍵はすでに開いていた。

それはもう姉が帰ってきているということを示している。

少年はドアを開けると大きな声で自らの帰宅を伝えた。

「ただいまー。晩飯残ってるー?」

返事が帰ってこないので少年はリビングへと向かう。
姉はリビングにいた。

「あれ?姉ぇちゃん誰に電話してん?」

少し暗い表情で受話器を取る姉を、からかい半分でいながらも、心配しているようだった。

「誰でもええやろ……」

「ふーん……」

恥ずかしそうにしている姉を見て弟はすぐにピンと来たらしい。

さっきまでよりももっとからかうような声で核心をつく。

「要くんなんやろ?悠美姉、えらいご無沙汰やもんなぁ。」

悠美はドキッと肩を揺らすと、弟の顔を睨み付ける。

その顔はどんどん赤くなっていった。

「うるさいわ悠太のアホ。大学生にもなって8時に家に帰ってくんな、チンクシャ。」

疲れて帰ってきたのに全くヒドイ言われようである。

しかし、どうやらこんなことはこの姉弟には当たり前のことの様で、悠太は気にせずに話を続ける。


「何を隠すことがあんねんな。彼女が彼氏に電話するんなんて当たり前やん。つか、どうせまた約束がどうとかで掛けてないんやろ?」


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