放浪カモメ
「しかもその間もたまにしか電話もしてこぉへんし。大阪戻ってきたんなんて三回か四回くらいやろ?なんか理由でもあるん?」
悠太の言葉に杉宮は上手い言葉が出てこなかった。
「あー、あれやろ。千葉で他に好きな人でも出来てしもたんやろ。せやったらしゃーないもんなぁ?……って要くん?」
杉宮は佐野のことをズバリ言い当てられてしまい、嘘でも否定することができずに黙ってしまう。
「ほんまに……そうなんか?」
「いや、オレ――」
杉宮が何か答えたようとした瞬間。
リビングの扉が勢い良く開いた。
「悠太ただいま。電話……誰としとるん?」
「あ、姉ぇちゃん。代わ……ろか?」
悠太は小さく、杉宮にだけに聞こえるように、電話を代わろうか?と聞いた。
不自然な弟の態度に悠美は姉の勘とでも、女の勘とでも言うのだろうか。電話の相手に感付き悠太から受話器を奪い取った。
「要ちゃん?要ちゃんなんやろ!?かな……」
『ツーツーツー……』
悠美の耳に響いたのは、忘れることのできない人の声ではなく、胸をくしゃくしゃに潰してしまう電話の途切れた音だった。