放浪カモメ

それからソガの地元の話や、北海道の山中で野宿をしていて熊に襲われかけた話を聞いた。

辺りも静まると、ソガが急に真面目な顔をして言うのだった。


「でも、きっとさカモが思ってるほど遠くにはいないと思うよ?」

「どういう意味ですか……?」

核心を聞き出そうとした鴨居だったが、今までとは違った優しげな笑みでソガは言う。

「さぁ?それは、カモが見つけだすこと、見つけなきゃいけないことだと思う。そうだろカモ?」

鴨居は小さく「はい」と言って大きくうなずいた。

ソガは大きな手でカモの頭をグシグシと撫でる。

「ま、気張れや少年。」

最後にそう言ってポンと頭を叩くと、ソガは寝袋のチャックを上までしめ、眠ってしまった。

ソガの豪快ないびきに睡眠を妨害されながらも、人と接することの大切さを再確認した鴨居だった。




< 175 / 328 >

この作品をシェア

pagetop