放浪カモメ
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鴨居が本人に全く自覚のない運命の出会いを果たした頃。
大した人通りもない商店街に、似付かわしくないロックな音が響きわたった。
「もしもし、杉宮ですけど。」
それは杉宮の携帯の着信音だったようで、ぽつぽつと振り返った通行人が、冷ややかな視線を送りながらまた各々の買い物へと戻っていく。
「もしもし、オレやけど。」
「悠太か……どうした?」
聞きなれた大阪弁。電話越しに分かる明るさとその表情。
「いやぁそろそろ、おうた頃かなぁって。」
杉宮には誰が誰に会うのか全く分からない。
「何の話だよそれ?」
「へっ?まだおうてへんの?まさか迷ってるんやないやろなぁ……」
ますます分からなくなり混乱する杉宮に気付き、悠太が慌てて事情を説明をする。
「姉貴がな、要くんに会いに行ってんやけど。そろそろ東京に着く頃やと思うねん。」
「悠美が!?」