放浪カモメ

杉宮が走りだした頃。

悠美はまだ東京駅に居た。

「うわ……凄い人おる。次どこに行ったらええのか全然分からん。」

悠美は新幹線の改札を出る。

しばらくうろうろと構内を散策してみたが、構内の広さと出ている電車の本数の多さに、ただ驚いていた。

「こらアカンなぁ……誰かに聞かな。あ、すいません。」

人の良さそうなおばあさんに話し掛けたのだが、その人は会釈をしただけで去っていってしまった。

「なっ……何で話も聞いてくれへんの?関東は冷たいってほんまなんか?」

ジェネレーションギャップならぬローカルギャップとでも言うのだろうか。

大阪ならば道端で声をかければ、大事な会議に遅刻しそうな人など極少数の人以外ならばまず間違いなく足を止め話を聞いてくれる。

なんなら紙を持ってキョロキョロとしているだけで、知らないおばちゃんが「迷てんの?どないしたん?」と声を掛けてくるなんて、ネタが多くあるほど大阪人は世話を焼くのが好きなのだ。

ローカルギャップも多少はあるのだろうが、東京駅と言ったら先に挙げた極少数が沢山いる場所である。

なかなか立ち止まってくれる人はいない。それが現実だった。

「誰か話聞いてやー。」


方向音痴な悠美の悲痛の叫びも、忙しなく歩いていく人達に紛れ掻き消されてしまうのだった。



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