放浪カモメ
杉宮は人目も気にせずに走る。
息を切らし、服もはだけ、髪のセットも崩れかけている。
しかし、そんなことは微塵も今の杉宮には気にならなかったのだ。
(……千葉までなら、山手線か?くそっ、いつすれ違ったんだよ。)
「あっ……た。」
ホームへと続く上り階段を全速力で駆け上がる。
『プルルルルル……』
電車の発車を告げる放送。
「くそ、邪魔だよ。どいてくれ……」
杉宮はゆっくりと階段を登る人を掻き分け、一気にホームまでたどり着く。
『5番線発車いたします。』
しかし放送は杉宮のいるホームの向かいの電車のことだった。
間に合った。と胸を撫で下ろす杉宮の視界に一人の女性が写る。
「あっ……あんのバカ電車間違って!!」
そこには今にも間違っている5番線の電車に乗り込もうとしている悠美の姿があったのだ。
杉宮は人目を気にせずに叫ぶ。
「悠美ぃーーーーっ!!」