放浪カモメ
「いきなりだったから驚いたよ。」
「だって要ちゃんがあんな電話……」
悠太と話した電話。
佐野のことが好きなのではと言われ、否定することも肯定することもできなかった杉宮は、悠美に代わった瞬間にとっさに受話器を置いてしまったのだった。
実際、杉宮は佐野のことが好きなのは事実だった。
そして今、もう一つ分かったこと
「悠美……会いたかった。」
杉宮はホームのど真ん中で悠美にキスをした。
本来なら人前でそんな行動を起こす様な二人ではないのだが、長いこと会えなかっただけに淋しさが募っていたのかもしれない。
唇を離すと、悠美は顔を赤く染めていた。
「なに久々だからって顔赤くしてんだよ。」
杉宮は優しく悠美の頭を撫でる。
「要ちゃん標準語にあわへん。」
――やっと分かったんだ。
オレは悠美が好きなんだ。
でも、遅すぎた。
そして、そのことに気付くのすらもう手遅れで。
灰色の空から振り出した大雨が、オレ達のかけがえのない日常をかき乱す……