放浪カモメ

雨は止むことなく次の日を迎えた。

「要ちゃんどうするの！？」

「悠美……お前は今すぐ大阪に帰れ。オレは会わなきゃいけない人がいるから、その人に会ったら京都に行くよ。」

そう言って杉宮は二万円を悠美に手渡す。


「要ちゃんウチ嫌や。要ちゃんが旅館の為に他の人と結婚するんなんか嫌からな。」

ぼろぼろと涙を溢し、悠美は杉宮に抱きついた。

杉宮は困ったように眉をひそめながら笑い、昨日とは何か違う優しさを含み悠美の頭を撫でた。

「悠美……今までありがとな。」

ｸﾞｯと引き寄せ、そう言うと杉宮は雨の中走りだした。

遠く去っていく杉宮の姿を追うことすらできずに、悠美はその場に泣き崩れた。





止まない雨が全てをｸﾞｼｬｸﾞｼｬにかき乱す。

僕達がようやく気付いたかけがえのない日常も……

オレ達がようやく見付けた大切なものさえも……

私たちが歩むはずだった平穏な明日さえも……

みんな……







みんな。