放浪カモメ
真夏の刺すような日差しの中出会った少女。
田舎の山奥で見たのは。
こんな偏狭の地で何よりも孤独を抱えた小さな瞳。
僕はそんな少女に強くひかれてしまったんだ。
「あ、はい。えっと…その娘は?」
少年は立ち上がるとその少女を指差し尋ねる。
そんな少年を見て少女はより警戒を強めてしまったのだろう、和尚の背中の奥へと隠れてしまう。
「君と同じだよ。ずいぶん遠くから来たらしい。体も自転車もボロボロだ。」
和尚は笑いながら優しく少女を前に出すと、トンと背中を押した。
「こんな出会いも珍しい。お互いに同じ胸中の人と話すのは何か得るモノがあるかもしれないね。」
そう言い残して和尚は仏堂の奥へと行ってしまう。
残された二人の間にしばし沈黙が流れるが、心地よい風が少年を後押した。
とは言っても、挨拶というのには実にたどたどしかったのだが。
「あ、その…ども。」
「…ども。」
こうして僕達二人の運命の歯車がゆっくりと――
そう、ゆっくりと回りだした。