放浪カモメ
杉宮が佐野の研究室に到着した。
「あれ?先生いねぇじゃん。何処にいっ……」
『ガチャ。ギーーーッ。』
扉が開くと、全身びしょびしょに濡れた佐野が帰ってきた。
「なっ!?先生どうしたんですか、びしょぬれじゃないですか。」
「ああ、杉宮か……」
まるで意識が朦朧としているかの様な佐野。
着ていたワイシャツをおもむろに脱ぎはじめた。
「えっ!?すいません……オレすぐ外に。」
「構わないから、そこにいろ。」
杉宮は後ろを向き、佐野はそのまま下着まで全てを着替えた。
『シュボッ。』
と言うライターの音がしたので、杉宮はおそるおそる佐野の方を振り返った。
着替え終えた佐野がタバコをふかす。
「どうしたんだ、まだ夏休みだぞ?」
「…………。」
いきなり佐野に歩み寄ると、杉宮は佐野からタバコを奪い取った。
そしてタバコをくわえると、ゆっくりと煙を吐いた。
「……教えろよ。」
「杉宮?」
杉宮はタバコを佐野に乱暴に返すと低い声で唸るように言う。
「オレがアンタの煙草をむせずに吸えたら、アンタが何で子供を作る資格がないのか、教えるって約束だったろ。」
睨み付ける様な視線に、佐野は驚きながらも、ふっと笑みをこぼした。