放浪カモメ
愛しい人が出来たとき、ただ強くその人を抱き締めることが出来たなら…
曖昧に軋んでは我に返る、僕のこんな儚い気持ちさえも――
真っすぐに伝えることが出来るのだろうか?
鴨居とメグが和尚の元を離れて三日目のこと。
いよいよ青森県に入った二人は、自転車旅で初めての大雨に遭遇していた。
メグは本島横断をとりあえずの目標としていたので、いつの間にか日本の最北端、稚内が目標になっていた鴨居とはここ青森県で別れることになる。
そんな二人の別れをどうにか先倒しにしようとする雨に心なしか感謝している鴨居だったが、自分ではそんな気持ちに気付いてはいないらしい。
たまたま通りかかった市民会館で雨宿りをしている二人。
ザァザァと音を立てる雨を見ながらメグは鴨居にもらった麦わら帽子を片時も離そうとしなかった。