放浪カモメ
へらへらと笑いながら近づいてきた背の高い男。
恐らくは先輩であろう。
「あれー?小林じゃん。こんなとこで何やってんだよ。英文化研究会の勧誘の人手足りねぇの知ってんだろ?」
校舎の中からひょっこりと出てきたその人は、僕を見てそう言った。
(え……小林?この人誰かと勘違いしてないか?)
オレが何も反応しなかったので、その人は続けて言う。
「おーい、小林聞いてる?」
「えっ…だ…」
「誰ですか?」と言おうとしたオレの口を軽くふさいで、ボクシング部の人達に気付かれない様にオレにウィンクをした。
(そっか、この人オレのことを助けようとしてくれているんだ。)
オレは「お願いします」と込めて小さく頷く。
その人はオレの肩を掴んでいる人達を鋭い目付きで睨み付ける。
「あんたらさ、うちの部員にちょっかい出さないでくれるかなぁ?」
オレの肩を掴んでいたボクシング部の人の手を掴むと、その人はオレを解放してくれた。
「ちっ……なんだよ。杉宮の連れかよ。おい退くぞ。」
杉宮と呼ばれたその人。
ボクシング部の人達は何故か少しおびえたように、足早に去っていった。