放浪カモメ
第三章〜それは幾重に積もる時間〜
違和感
一ヵ月半にもおよぶ長い旅が終わり、束の間の休息をした鴨居だった。
そして、またいつも通りに二学期が始まる。とそう思っていた。
学校に着いた瞬間に鴨居は、岡崎と新田による熱い包容に苦しむことになる。
二人とも本気で鴨居のことを心配していたのだ。
そうして二人で鴨居を心配しているうちに新田と岡崎にある変化が起きていた。
「実はなカモ……」
なんだか照れ臭そうにする新田。
鴨居は鈍感なので本当に気付いていなかった様で、目をぱちくりさせた。
「オレたち付き合い始めたんだ。ねー?早苗ちゃん。」
新田が惚気て抱きつこうとしたのを岡崎はすかさず制止した。
「人前ではいちゃつかないって約束っスよ。」
どうやら二人の主導権は岡崎が握っているらしかった。
「そぉなんだ!!良かったね、お似合いだよ二人とも。」
そう言って笑った鴨居。
新田は素直に喜んでいたが、岡崎はどこか悲しそうな顔を少しだけ見せた。
授業の鐘が鳴り、また退屈な日々が戻ってきた。
しかしそこにある一点の違和感に鴨居が気付くのは、佐野の研究室に遊びに行った時になるのだった。