放浪カモメ
虚しさ
別れは本当に突然やってきて、虚しさだけをオレの中に置き去りにしては去っていく。
誰が悪いわけじゃないのは分かってる。
でも――
それでも神様。
こうも大切な人が何もいわず離れていってはオレの心がもたないよ。
会いたい。会いたい。会いたい――
今はただ君に会いたい。
そう願うのすら虚しく感じる様になった時、きっとその人を忘れるカウントダウンが始まるのだろう。
メグが突然居なくなってしまった孤独感と悲しみから鴨居は虚無感にさいなまれていた。
世界から色彩が消える。とでも表現するのが一番しっくりとくるかもしれない。
身体には力が入らなく、頭はぼーっとしていて逆上(のぼ)せてしまったかのようだ。
「あ、あれ?」
突然流れだした涙に鴨居自身が一番驚いていた。
温かい雫が頬を伝い床にこぼれ落ちる。
何か悩みがあれば鴨居はいつも杉宮に話をしていた。
他の誰にも言いたくないようなことも杉宮にだったら話すことができた。
今はそんな頼れる人物がいない。
それどころかその人が、自分には何も伝えずに居なくなってしまった。という事実が余計に虚しさを煽っていた。
『ゴッ!!』
振り下ろした拳が床にあたって弾ける。
ジンジンと痛むところから血が滲んでくるのがスローモーションのように見えて、鴨居は悲しくなった。
無造作に引っ張った布団を顔にかける。
布から透ける明かりさえも煩く感じてしまう。そんな自分の弱さに腹が立った。
「ちくしょう……」