放浪カモメ
「悠太くんはお姉さんと二人暮しなの?」

ようやく敬語が抜けた鴨居が尋ねる。

「はい、そうです。こっちの大学通うのに、先にこっちに来てた姉貴の所に転がり込むんが経費的にも楽だったんで。」

「そっか仲良しなんだね。」

思いがけない鴨居の一言に悠太は敬語も忘れて反論した。

「ち、ちゃうわ。誰があんなヤツと仲良いわけあるかい。自分急に変なこと言いなや。」

怒涛の関西弁に少しだけ恐怖を感じる鴨居。

「うん、やっぱりだ。何か変だと思ってたんだけどさ。」

「何すか?」

タクシーは日の沈んだ大阪の街を駆け抜けている。

会ったばかりの二人だったが早くも打ち解け始めていたのは、二人の大らかな性格からか、それとも大阪特有の雰囲気がそうさせているのか。

「悠太くん敬語下手なんだから、無理して使わなくても良いよ。関西弁もっと聞きたいし。」

悠太は毒気も何もかもを抜かれてしまった様な気がして、何故だか鴨居には適わないと思った。

「ほな、そうするわ。下手や言われた敬語なんか使い続けられへんしな。」

にかっ。と笑った悠太は少しだけ幼く見えて、鴨居もつられて笑う。

目的地に着くと鴨居がタクシー料金を払った。

もちろん悠太が払おうとしたのを鴨居が止めたのだ。

悠太の家は八階建てのマンションの一室で二人暮しにしては広かった。

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