放浪カモメ
二日目も三日目も何の進展もなく終わってしまった。

がくっと肩を落とす鴨居を悠太はどうにか励まそうとしていた。

「鴨居くん、人探しなんかそう簡単に見つかるものやないって。焦らずじっくり行こ、な?」

「うん、分かってる。……分かってるよ。」

力のない返事。

「あと13ヶ所もあるし、きっとその中にメグちゃんのこと知ってる人もいるて。だから今は力貯えるために飯食お、な?」

キッチンからは悠美の作る肉じゃがの言い匂いが立ちこめている。

どんな状況だって腹は空くものである。

鴨居は、そんなことしてる場合じゃないだろう?と自分に言いながらも食卓に着いた。

「今日はバイトの給料日だったしちょっと奮発しちゃった。要ちゃんが一番美味しいって言ってくれた肉じゃがでーす。」

ほくほくと炊けたじゃがいもに、甘辛く牛肉のエキスをたっぷりと含ませたタレがしみ込んでいる。

一口食べた瞬間に口の中に旨味が広がった。

「すごい……美味しい。」

思わず出た一言だった。

それほどに悠美の料理は絶品なのだ。

「せやろ?姉貴は料理だけは上手いねん。ただ男心っちゅうもんを分かってへんから、胃袋つかんでも逃げられてまうんやけどな。」

食卓に『ゴツッ』というに鈍い音が響いた。

「美味しいでしょ鴨居くん?これね、要ちゃんに初めて振る舞った料理なんだぁ。」

にこやかに話す悠美。

「しかも未だに要くんのこと見え見えに引きずっとるやろ?しつこいなぁホンマ。」

『ゴツッ』。『ゴッ、ゴツッ』

「引きずってなんかない。引きずってなんかないけと、やっぱり納得はでけへんよ。」

ごはんを二、三粒だけ口に含んだ悠美。

凄く淋しそうな横顔に鴨居まで胸が痛んだ。

そしてその横で、原型をとどめずに息絶える悠太(嘘)。

鴨居は自分は知らない杉宮について聞いてみることにした。
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