放浪カモメ
杉宮要
それから一週間が経ち。
鴨居の頭の中からようやく大川美鈴の名前が薄れてきた頃。
鴨居はいつも通りに佐野の研究室を訪れていた。
そして、いつも通りに杉宮が元気いっぱいに入ってくる。
「おっス、カモ。やっぱりここか。」
杉宮は入ってくるなり鴨居の隣に座る。
「実はまた、合コンのメンバー足りなくてさぁ。明日なんだけどダメ?」
杉宮が鴨居に話し掛けてくる話題の七割は合コンのことだった。
鴨居は少し呆れたように言う。
「先輩…あんなことがあったオレによく合コンの話が出来ますね。」
ジッと不機嫌そうな目をした鴨居。
杉宮はへらへらと笑い流す。
「あっはっは。そうだったなカモは彼女の友達をお持ち帰りしちゃったんだもんな。ははは。」
腹を抱えて笑う杉宮。
「ほう…恋人の友達を騙くらかすとは、やるじゃないか鴨居。」
パソコンに向き合いながら二人の会話を聞いていた佐野も、からかうようにして笑った。
「もう、二人して!!笑い事じゃないんですから。…もう。」
そして鴨居はふと、ある疑問が浮かんぶのだった。
「そういえば、杉宮先輩って暇さえあれば合コンしてますよね。あんなにモテるのに彼女とか居ないんですか?」