放浪カモメ
朝になり鴨居はどこかに電話を掛けていた。

それは実家にいる母親だった。

旅のことメグのこと、大阪でのこと、そして、これからのことを話した。

母親は泣いた。

信じられない気持ちもあってかもしれないが、何よりも息子の成長が会話だけで伝わり嬉しかったのだ。

さすがに大学を辞めることには反対したが、鴨居の確固たる決意にしぶしぶと折れる。

「少しぐらいなら仕送りもするわよ?」

そう提案してくれた母親だったが、鴨居は断ってしまう。

「ありがとう母さん。すごく助かるけど、オレ自分の足で立ってメグ達と歩いていきたいんだ。」

「うん……そっか。」

本当に成長したんだな。そう思って嬉しくなる反面、ほんの少し母親は寂しさを感じた。

電話の最後に「甘えなくていいから、時には頼りなさいね」そう言って母親は電話を切った。

それはもう大人として鴨居と接するということ。

そして。それでもあなたは私の子供なんだからね。ということが簡潔に表されていた。

「さぁ頑張るかな。」



伸びをした鴨居に、眩しい日差しが降り注ぐ。

目を覆い隠しながら鴨居は静かに笑った。
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