放浪カモメ
後日、正式な退学届けを用意して鴨居は大学事務局を訪れた。

今この時を以て鴨居は大学生ではなくなった。



「カモ先輩ほんとに辞めちゃうんスね。」

退学の話を聞き付けた岡崎と新田が鴨居の元へと駆け付けた。

「うん、今までありがとう二人とも。すごい楽しかった。」

「バカ。そんなのはオレ達の台詞だよ。カモが居たから……カモが居なかったらオレ。」

新田は涙を見せる前に拭き取り、ぐっと拳を突き出した。

「良いかカモ。オレはぜったいに早苗を幸せにするって誓う。だからお前もメグちゃんのことを幸せにすると誓え。」

大学のど真ん中で愛を叫ぶ新田。

何人かの生徒ははやしたてるが本人は至って真面目である。

「うん、誓うよ。」

鴨居も拳を突き出すと、お互いの拳をぶつけた。

もう二人に言葉など必要なかった。

全ての言葉は拳から互いの心に響いたのだから。

鴨居は振り向きそのままある場所へと消えていった。


残された岡崎と新田を囲いこむ生徒達。

「キス。キス。キス。」

新田の熱烈な愛の叫びを聞いた生徒達がキスをしろとはやしたてていた。

もうこうなった新田を止めることなどできる訳もなく。

岡崎はやけくそになって人前でキスを受け入れた。

「ヒューーー。熱いよー二人とも。」

そんな歓声は、生活指導の八木教授が怒鳴るまで、いつまでも続きましたとさ☆
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