放浪カモメ
鴨居がどうしても納得いかない。という表情をするので、杉宮が付け足す。
「あー、あれなんだよ遠距離でなかなか会えなくてさ。あ、でも俺は誰かさんみたいにお持ち帰りしたりはしないから、さ☆」
チャンスがあれば確実に、杉宮は鴨居のことをからかった。
大川のことについて悩んでしまっていた鴨居にとって、こうして気楽にからかってくれるのは凄く助かっている。
「杉宮先輩の彼女って…どういう人なんですか?」
そう聞かれた杉宮は少しの間、窓から遠くの空を見つめていた。
初めてみる杉宮の寂しげな顔。
「んー……そうだな。飲み行こうぜ。気恥ずかしくてそんな話酔ってでもないとできねぇよ。今日はカモのおごりな。」
杉宮はニッと笑うと、鴨居の肩をポンと叩いた。
「はぁ…給料前で厳しいってのに。分かりました、行きましょう。」
楽しげに研究室から出ていく2人を、佐野は嬉しそうに見送っていた。