放浪カモメ
「先生……ごめんオレには分かんないよ。」
あの音が消えない。
「世界で一番好きな人が死んでしまったのなら、今は杉宮先輩が一番なんじゃないんですか?オレには……分かんないよ。」
記憶なんて嫌でも薄れていく。
でも、思いは記憶と同じではない。
消えない想いなんて、薄れない想いなんていくらでもある。
時が経つほどに強まる想いだって――
「それだけ大好きだったのは分かるけどさ……なんか、なんか悲しすぎるじゃんか。」
佐野は決して泣かない。
泣いたところでマサキが戻ってくることは無いから。
泣いたところで悲しみが消えるわけでは無いから。
泣いたところで虚しさは増すばかりだから。
そんな佐野の性格すらも鴨居には悲しく感じてしまった。