放浪カモメ

覚悟

鴨居はコンビニの前で頭を抱えてうなり声をあげている。

「むー。むーーーっ。」

手にしているのは無料の就職情報雑誌。

「有資格者求む。経験者歓迎。大学卒以上……」

ふぅ。とため息をして鴨居は座る。

遣る瀬なくなって丸めた雑誌を片手に青空を見上げた。

「やっぱ甘くねぇよ現実。」

視界を横切る一羽の鳥。

あの時見たカモメを思い出して、鴨居はゆっくりと立ち上がる。

「気晴らしに歩こう……」

ゆっくりと歩き始めた鴨居。

普段は通らない道を歩いていると、知り尽くしたと思っていた街にまだまだ自分は知らなかった世界があるのだと再発見した。

良い匂いの漂う本格カレー屋さん。女性服の服屋。懐かしいタバコ屋に質屋さん。

いろいろな発見をしていると、見たことのある場所に戻る。

ブルーシートで囲まれたその場所は未だに工事が進んでいる気配が無い。

「あれは痛かったな、マジで死ぬかと思ったし。」

大川の勝手な想いから、六人の不良に囲まれリンチにあった場所。

杉宮に助けられ、杉宮が親友であると認識した場所。

自分を思い泣いてくれる人がいるのだと分かった特別な場所。

懐かしくなって鴨居はブルーシートの中に入ってみた。


すると、誰かが端っこの方で倒れている。

鴨居はすぐに駆け寄ると声をかけた。

「大丈夫ですか?気分悪いんですか?……って、あれ?もしかして。」


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