放浪カモメ
「おーい鴨居。わりぃけど事務所に置いてきちまった鉛筆取ってきてくれ。」

坂口が材木を裁断する機械の場所から大声で叫んだ。

「はーい、今すぐ。」

鴨居は走って事務所に行き坂口の机から鉛筆を取ってきた。

「はい、坂口さん。」

「ん、サンキュー。」

手渡された鉛筆を耳に挟む坂口。

坂口はねじり鉢巻きもしているし。

大工のイメージってこんなだよな。なんて鴨居は思った。

「あ、そろそろお昼ですね。坂口さん何にします?」

鴨居は基本的に雑務しかできないので、昼飯や残業の時の晩飯の調達も任されている。

「あー、なんか最近CMで宣伝してるあの、何だったか?あれ買ってきてくれや。」

なんとアバウトな注文だろうか。

「はい、分かりました。」

しかし、もうそんなのも慣れっこになっていた鴨居は、新しい物好きの坂口の注文に備えて、しっかりとコンビニの弁当情報を把握していた。

「それじゃ、買い出し行ってきまーす!!」

鴨居がそう叫ぶと工務店の所々から「おー」とか「早くしろよ」などと返事がした。

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