放浪カモメ

披露宴も少しずつ落ち着いてきた頃、佐野が鴨居達の席までやってきた。


「おう、腹いっぱい食ってるか?」

ウエディング姿に相応しくない言葉遣いも何だか佐野らしくて安心する。

「もう、お腹いっぱいです。結婚おめでとうございます。先生綺麗ですよ。」

鴨居にそう言われて恥ずかしかったのか、にかっと豪快に笑う佐野。

「来てくれて嬉しいよ。お母様に言われてしまったが、私は本当にお前等には感謝しているんだぞ。」

改めてそう言われると、何だか逆に実感が遠退いていくような感覚になる。

「これからブーケトスもあるのにメグちゃんがいないのは残念だな鴨居。なんなら特別にお前が取っても良いぞ?」

最後は佐野らしい冗談で、こんな風に着飾っていてもやっぱり、佐野は佐野であって。

大して変わんないもんだな。なんて鴨居は思った。



シャンパンを一口飲んで鴨居が佐野に聞く。

「ねえ、先生。達男さんのこと本当に好きなの?」

その鴨居の不思議な質問に杉宮と梓が首を傾げたが、佐野はさらりと答えると、さっさと去っていった。

「ああ、好きだぞ。世界で三番目に……な。」

その時の佐野の豪快な笑顔が鴨居には忘れられない。



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