放浪カモメ
結婚式が終わり、杉宮と梓は二次会には参加せずに京都に帰る。ということで鴨居はタクシーを拾うまで二人に付き合うことにした。
「いやぁ、食った食った。さすがに良い物出るなー、披露宴は。」
洋式のパーティー会場のいったいどこにあったのか、杉宮は爪楊枝で歯の間をかきながらそう言った。
「もう、せっかくの余韻が台無しじゃない。ねぇ?鴨居君。」
そうやって文句を言う梓だったが、握っている杉宮のスーツの袖を離すことはない。
「良いんだよ、余韻なんてずっと浸ってたら悲しくなるだけだろ。」
「まぁ、そうだけど。少しくらい浸ったって良いじゃない。」
梓は立ち止まり真っ白に輝いている教会を見つめる。
つられるように見上げた鴨居。
「はは。良いなぁ結婚式。オレもいつか……」
そう呟いた鴨居を、杉宮は優しげな表情で見つめ言う。
「なら次にオレらが会うのは、カモとメグちゃんの結婚式になるな。」
言われてみるまで、忘れていて鴨居は顔を赤らめた。
「はい。その時にはオレ必ず先輩を呼びます。」
「おう。美味い飯用意しろよな。」
そんな他愛もない会話をしているとタクシーがやってきた。
杉宮は梓を先に乗せると、タクシーに乗り込んだ。
もう、次に会うのはいつになるか分からない。
もしかしたら、もうこの先ずっと会うことも無くなるかもしれない。
そう思ったら、鴨居はそれを改めて口に出さずにはいられなかった。
「先輩!!オレ。オレ……先輩に会えて本当に良かった。」
真顔でそう叫ぶ鴨居に杉宮は一言だけ返す。
「ああ……オレもだよカモ。」