放浪カモメ

買ってきた物を冷蔵庫に入れ終えると、メグも養父もリビングに集まった。

｢さて、カモ君はこれからどうしたい？やっぱり千葉で同棲するのが一番良いのかな？｣

養父に聞かれて、カモはメグの方を見た。

そして鴨居が出した答えは話を聞く三人の予想とは少し違っていた。

｢最近しばらく考えていたんですけど……子供が産まれるまではメグは大阪に居たほうが良いと思うんです。｣

きっと二人は同棲がしたいのだろうと思っていた養父は、少し動揺したが、鴨居の理由はきちんと考え有ってのもので改めて感心もした。

｢八ヶ月にもなるし、急に環境を変えるのはメグにも赤ちゃんにも良くないと思うし。何よりもし何かあった時に仕事中だとすぐには駆け付けてあげられないですから。｣

｢そっか。よく考えてくれていたんだね。｣

養母のやさしい声。

｢ということらしいが、メグはどうしたい？｣

今度はメグに考えを聞く養父。

メグは少しだけ考えると、自分の想いをそのままに伝える。

｢私は正直カモと一緒に暮らしたいよ。でも、赤ちゃんの為にはやっぱり大阪にいるのが今は良いと思う。｣

一緒に暮らしたい。という一言が本当に鴨居には嬉しかった。

｢そういうことなので、しばらくはメグのこと宜しくお願いします。｣

そう言って鴨居は頭を下げる。

｢ま、娘の出産だしね。頼まれなくたってお世話するけど。｣

養母はそう言うと笑って鴨居を見る。

鴨居は少し困った表情で頬笑み返した。

｢ところでカモくんはいつまで大阪にいられるんだい？｣

メグは出産を終えるまでは大阪で家族と一緒に過ごすことが決定して、養父が思い出したかのようにそう切り出した。

｢普通に三連休で来ただけなんで、明後日の午後には帰ります。｣


千葉から大阪までの道のりは新幹線を使ったとしても、五時間をゆうに越える。

電車の終電とかまで考えると、遅くても夕方には出発する必要があった。

｢もう少しくらいゆっくりしていけば良いのに。まぁ、仕方ないことだけど。｣