放浪カモメ
「で、付き合ってから半年くらいに父親の転勤か何かで大阪に行っちまったよ。」
杉宮は話し終えると枝豆を手に取り、少し口から離したところで枝豆をつまむと豆を口に飛ばして食べた。
ずいぶん器用なのは分かったが、マナーの面ではどうかと思う行為も彼なりの照れ隠しなのだろう。
「それから会ったりはしてるんですか?」
辺りは段々と暗くなってきていた。
薄暗くなる空に反発するように街頭やネオンが輝きだす。
鴨居は、多分あまり会ってはいないのだろう。と分かっていたのだが敢えてその質問をした。
「んー、確か三回だったかな会ったのは。さすがに大学生同士に大阪、千葉間を行き来するのはスケジュール的にも経費の面でもキツイよ。」
予想の範疇(はんちゅう)にとどまっていた簡潔な答え。
鴨居には、ほんのちょっと淋しそうな杉宮の瞳に、彼の恋人の顔が写っている様な気がしてならなかった。
「あー…でも、本当に意外だったなぁ。オレてっきり、先輩は佐野教授のことが好きなんだとばかり思ってました。」
鴨居はようやく一杯目のビールを飲み干し、言う。
「…ふーん。カモって意外と感良いのな…」
「えっ…?それってどういう…」