放浪カモメ
その後でもう一度、医師からきちんと説明を受けた。

正当な処置を施した結果の不幸な事態。

誠に申し訳ありませんでした。と深く頭を下げた医者の顔を鴨居は見ることができなかった。

言い訳がましく聞こえても現実だ。

どんなに死を受け入れることができなくても、もうメグが鴨居に笑いかけることはない。それが現実だった。





鴨居が赤ちゃんを見ていると一人の看護士が隣に来てくれた。

「お子さん、二週間近くも早く出てきちゃって小さいけど、とても元気な、生命力に満ち溢れた声で泣いたんですよ。」

子供の頬を撫でようとした手はガラスに阻まれてしまう。

行き場のない感情が涙になって溢れる。

「奥様のことは本当に残念でした。でもこの子が」

「ひな。」

鴨居を励まそうとすると、か鴨居が呟いた。

そして涙を拭いて、子供を見つめながら言う。

「雛っていう名前なんです。ずっと前にメグと決めていたんです。」

「雛。可愛らしくてとても良い名前ですね。」

こくりと頷いた鴨居。

それから二人は黙って雛を見つめていた。



しばらくすると看護師さんが深く一礼をしてその場を離れた。


一人になった鴨居。

雛を見つめながら、メグと名前を決めた時のことを思い出していた……






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