放浪カモメ
「鴨居。またじい様とばあ様が来てたんだってな。大変だなぁ。」

坂口がそう言うと鴨居は笑う。

「にしても、お前もやっと仕事できる様になってきたな。」

「一人欠けちゃいましたからね、その分オレが頑張らなくちゃって必死でしたよ。」

鴨居が大阪に居た間のたった1週間の間に、樹は工務店を辞めてしまっていた。

誰も行き先を知らなかった。

「半人前が抜けたくらいじゃ変わらねぇよ。それに4分の一人前が頑張ったところで、何も変わりゃあしねぇよ。」

いつの間にか来ていた濱田。

「ええっ、オレ4分の一人前!?そりゃないですよ社長〜〜。」

がっはっはと濱田と坂口が笑った。

すると。

「オギャア。オギャア、オギャア。」

事務所の中から雛の泣き声が聞こえた。

鴨居が走って駆け付ける。

「どっかの強面が笑うから怖かったんだよねー。よしよし、もう大丈夫だよ、ほらパパも来てくれたし。」

葛城の優しい声で落ち着いたのか雛は泣き止んでいた。

「葛城さんスイマセン、事務所で雛を預かってもらっちゃって。」

雛を葛城から渡され、鴨居がよしよしと宥めた。

「うん?良いんだよ、雛ちゃん見てると癒されるしね。ほらここって、顔面凶器みたいな社長をはじめ強面の巣窟じゃない?雛ちゃんいてくれて助かるよ。」

事務所の中だからって言いたい放題な葛城。

< 321 / 328 >

この作品をシェア

pagetop