放浪カモメ
月日は流れて三年後。


それはいつも通りの慌ただしい朝。

「雛ー。準備出来たかぁ?幼稚園遅刻しちゃうぞ。」

バターもジャムも塗っていないただの焼いたトーストをくわえながら、靴下を履く鴨居。

そんなだらしのない父親を見つめる小さな視線。

「ひな、さっきからパパ待ってるんだけど。こんなんじゃ先が思いやられるよ。」

「待て雛、そんな言葉どこで覚えた?」


雛が初めて自分の手からミルクを飲んでくれた時、涙が出るほどに嬉しかった。

雛が初めてはいはいをした時も。

雛が初めて立った時も。

初めて歩いた時も、初めてパパと呼んでくれた時も涙を堪えることなんてできなくて。

これから先ずっと一緒で、このままのペースだと自分は後何回嬉し涙を流すのだろうか?

そんなことをしてたら、いつか涙が尽きて枯れてしまうのではないか?なんてバカみたいなことを真面目に考えたりもした。

「ほら、行こうか雛。」

「うん。」




朝日が眩しく二人を照らす。

幼稚園まで二人は手をつないで歩いていく。

そんないつもの風景が愛しくて、ただ愛しくて。

そこにただ1人、メグがいたらと未だに思ってしまう鴨居ではあったが。

一歩ずつ着実に、未来へと歩きだしているのだった。




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