放浪カモメ
「白い煙……火事なわけは無いから、煙草か?」
俺はゆっくりと、壁に設置されている手すりの様な階段を登る。
「やっぱり煙草の匂いだ。先客がいたのか。」
そして一番上の手すりを掴み、そぉっと様子を伺うと、そこには――
「……えっ!?」
そこに居たのは、煙草を吸いながら涙を流している女性。
その女性は俺の気配に気付くと、涙を素早く拭いてこちらに振り返った。
「だ…誰かいるの!?」
「え、あ……ごめんない。って、うわぁあっ!!」
俺は驚いて、足を滑らせ下に落ちた。
『ドン』という鈍い音と共に尻に痛みがはしった。
「つぁー…痛ぇ。」
つか、俺まじでダセぇ。
「お前ここの生徒だな?今は講義じゃないのか?」
その女性は屋根から俺を見下ろして、そう言った。
その白い頬にはもう涙はなかった。
しかし、長い時間泣いていたのだろう、鼻の頭が赤くなっていた。
俺は気を取り直して屋根の上へと登っていく。
「あんたは…?」