放浪カモメ
「おー、こらこら。ヒトのデスクで辛気臭いため息なんか吐いてくれるなよ、少年。」
鴨居の真正面でパソコンと向き合い資料の整理をしている女性。
彼女の名前は佐野 明美(さの あけみ)。
胸の谷間が見えるほどにYシャツをはだけさせ、かなり濃い目の煙草を斜めにふかす。
外見はいかにも不真面目そうだが彼女はれっきとした大学の教授である。
「佐野せんせい…」
「ん?なんだ。」
鴨居は佐野と課題とを交互に見てから言う。
「先生の教科…課題多すぎっス。」
そういった鴨居の手元を佐野が覗くと、自分が出した英語の課題が手が付けられていないままになっていた。
「――って、何やってんだオレ……じゃねぇよ。本当に何してんだお前!!」