放浪カモメ
「はい。あ、そだ飲み直しましょうか。せっかくの酔いが電話のせいで覚めちゃいましたよね。まったく……」
鴨居の空元気に杉宮は呆れるというよりも怒りを覚えていた。
「カモ……」
「杉宮先輩は何が良いですか?焼酎でもいきましょーかね。」
杉宮に何も聞かれたくなかった鴨居は、杉宮に喋る暇を与えぬように強引に喋り続ける。
それがどうしようもなく杉宮を傷つけていくのだとも知らずに。
「カモ…もう」
「ほら、枝豆おいしいですよ。いやぁ塩加減が抜群だなぁ、ここの枝豆は。ははは。」
鴨居は、ただ余計な心配を掛けたくなかった。
迷惑を掛けたくなかった。
ただ、それだけだった。
「カモ!!」
『バンッッ』と店内に大きな音が響く。
杉宮は無理に喋り続ける鴨居を止めるために、テーブルを叩いたのだった。
その音で店内が一瞬騒然とした。
張り詰めた空気が二人の間に流れた。
「えっ…杉宮先輩どうしたんですか?」