放浪カモメ


鴨居と杉宮の関係が良くなることはなく、大川との約束の23日になった。


鴨居は酒も飲んでいないのに、二日酔いのような頭痛と吐き気におそわれていた。

「うっ…胃が痛い。」

お腹を押さえながら大学までの道のりを歩いていると、後ろから誰かが呼ぶような声がした。

「カモ先輩。カモせんぱーい。」

「ふぇ?」

鴨居が後ろを振り返えると、鴨居に手を振りながら走ってくる小学生の姿。

「うわっ!!カモ先輩、何スかその顔!?」

鴨居の肩までしか身長のないその子は、背伸びをしながら鴨居の顔を覗き込む。

「あー、えっと…岡崎 早苗(おかざき さなえ)さんだっけ?」

「名前覚えてくれたんスか!?感激っス。」

その小さな子は岡崎早苗。

一見すると小学生だが、れっきとした大学生である。

女の子にしては短いショートヘアーと、男の子の様な喋り方が特徴的。

「にしてもヒドイ顔っスね。昨日飲み過ぎたりしたんですか?」

岡崎と鴨居は同じアパートにすんでいる。

ちょうど隣の部屋で、岡崎の引っ越しの荷入れの手伝いをしてあげたのが、そもそもの出会いだった。

不憫(ふびん)にも一人暮らしを強いられてしまった可哀相な小学生を見て(全て鴨居の勝手なイメージ)お人好しな鴨居は放ってなどおけなかったのだ。

そして岡崎が同じ大学だったことを知ったのはつい最近のこと。



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