放浪カモメ
「しかしオマエさん。よくもまぁ、課題出しそびれた教科の教授の机で居残りできたもんだなコラ。」
佐野はそう一喝すると、大して気にしてはいないらしく、すぐにパソコンへと向き直ってしまう。
そんなこんなで佐野のゲキを受け。
鴨居が嫌々ながらも真面目に課題に取り掛かってから数分のこと。
『コンコン』とドアをノックする音がして、背の高い短髪の青年が部屋に入ってきた。
「おーっす、あけみちゃん居る?」
ひょうひょうとした態度で入ってくるやいなや、その男は仮にも教授のことをちゃん付けで呼んでみせた。
ふてぶてしいにもほどがあるその男は鴨居の一つ上の先輩、杉宮 要(すぎみやかなめ)である。
鴨居とは違いルックスが良く、背が高い、また掴み所の無い性格からか女子からの人気が高い。
「杉宮、てめぇ。何回下の名前で呼ぶなっつったら分かんだよ。」
佐野の睨みに杉宮は手をひゃあっと挙げておどけて見せた。
これは何を言ってもダメだと悟った佐野は大きなため息を一つして仕事を続ける。
「お、カモもここ来てたんだ。あけみちゃんの課題?」
カモとは鴨居のあだ名。
「…そっス。」
鴨居はペンを動かし続けながら気のない返事を返した。