放浪カモメ
大川はにこっと笑うと、悪気なく言う。
「楽しいなんて思ってないよ。二人の為に話し合う機会を作ってあげようと思っただけ。今までみたいにズルズル付き合い続けてても、カモ君の為にも、真紀の為にもならないじゃない?」
確かに大川の意見は間違ってはいない。
だが、大川のとった行動は明らかに間違いであった。
「私はね、カモ君も真希も大好きなの。二人には幸せになって欲しいな。って思ってるんだよ。」
もはや、大川のどんな言葉も鴨居の怒りを助長させるだけだった。
「ねぇ…カモ君。真希のことは忘れて、私と付き合おうよ。」
鴨居は思わず握り締めていた拳を壁にぶつけた。
『ゴツッ』と鈍い音がして、それに気付いた店員が鴨居の元にやってくる。
「お、お客さま困ります。店の物を傷つけてもらっては……」
鴨居は、すみません。と言うとテーブルの上の手紙を拾う。
「頼むから、もう二度とオレの前に現れないでくれ。でないと、オレはあんたを本気で殴ることになる。」
鴨居はそう低く呟いて、大川の顔を一度も見ることなくファミレスから出ていった。