放浪カモメ
「あ、そだ……あけみちゃん、はいこれ。」

何かを思い出した杉宮は、そう言って佐野に二冊の本を手渡した。

佐野はその本をペラペラとめくると簡単にチェックをしていく。

「…で?課題を後から出しておいて何か言うことはないのか?」

にこぉ、っと素晴らしいばかりの威圧感を放ちながら笑う佐野。

それに気付いているのか、いないのか杉宮も笑顔を返し言う。

「ごめんね☆」

杉宮は最後にウィンクまでして見せた。

「杉宮要。春休みの課題提出……」

佐野はデスクの引き出しを開け、受け取った本をそこに入れる……





と見せかけ――

「却下!!」

なんと三階の窓から、杉宮の課題を投げ捨てた。

「って!ノォォオン!!」

まるで韋駄天の様な速さで部屋を後にする杉宮。

そのわずか数秒後に佐野が本を投げ捨てたのであろう地点から杉宮の声が聞こえた。

「あんの糞ババァ。今に見てろよ……」

まさか上にいる佐野に聞こえているなんて知る由もない杉宮。

彼が佐野の教科の単位を落とすことになるということは言うまでもない。


「…おい鴨居。オマエさん、間違っても"ああ"は成るなよ。」

「…うぃっス。心から誓うっス。」




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