放浪カモメ
ブルーシートの中に入っていくと男達は鴨居を囲うようにして陣取った。
「さてと……あー、何君だっけか?」
鴨居の真正面にいた金髪の男が隣の、側頭部を刈り上げた男に聞く。
「鴨居友徳だよ、大悟。」
「ああ、そうだったな。記憶力良いなぁノブは。」
大悟と呼ばれた男は、ノブという男の肩をバシバシと叩き、彼なりに称賛しているようだった。
すると鴨居の後ろにいた、一見すると真面目そうな男が話し掛けてきた。
「何でこうなったかなんて分からないよね…自分の置かれてる状況は把握できているかい?カモ君。」
物腰の柔らかそうな口調。落ち着いた低い声。
しかし、見るものを恐怖に陥れる冷たい瞳。
「は、把握するも何も…君たちがいきなり…」
鴨居の怯えている様子を見て、その男は満足気な笑みを浮かべる。
「そりゃそうだよね。僕から見ても、今君がおかれている立場は実に理不尽だ。誰かの勝手な逆恨みで今から僕たちに制裁されてしまうんだからね。」
男の言葉に、鴨居を囲んでいた残りの五人全員が愉快そうに笑った。
「なぁ、康(こう)ちゃん。もういいだろ?誰かくる前に、さっさとボコっちまおうぜ。」