放浪カモメ





痛ぇ……

いったい何発殴られたんだろ?

『ゴッ』

誰か、助け……

『ドガッ』

助ける?

オレを、誰が?

『ははは。こいつグッタリしてきたぜ。』

誰にも当たり障りなく過ごしてきて

深い関係を拒んできたオレを

誰が助けにくるっていうんだ?

『そろそろヤバいんじゃね?』

諦めよう。 

期待なんかするなよ。 

『おい、誰かこいつ持ち上げて押さえててくれよ。』

期待なんかしなければ――

裏切られることとだってない。

もう、いいんだ。

『俺が最後に一発決めたら終わりにしようぜ。』

そう頭では思っているのに……

なのに……なんで?

『おう。最高の右ストレートお見舞いしてやれ。』

なんで――

あの時の杉宮先輩の笑顔が頭から離れないんだろう……?





「杉宮…せん…ぱい…」

大悟に押さえ付けられている鴨居に向かって、ノブの無情な一撃が向かってきていた。

「杉宮先輩、助けて!!」

ノブの拳が、すでに腫れ上がっている鴨居の顔を捕らえようとしたその瞬間。

「おーっす小林ぃ。こんなとこで油売ってんなよ、まったく。」

ノブの拳を誰かが鴨居の顔に当たる寸手で受けとめたのだった。





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