放浪カモメ
「カモ……立てるか?」
「……はい。」
杉宮が鴨居の肩を支えながら、ゆっくりと立ち上がらせる。
そして首だけを振り返ると、今までに見たこともないような鋭い目付きを放ちながら康太にこう警告した。
「次にてめぇらがカモに手を出しやがったら、今度は遠慮なしでぶっ殺す。覚えとけ。」
康太は、はは、と引きつった笑顔で何度もコクコクと頷いた。
杉宮は鴨居を支えながら工事現場から立ち去っていく。
それは杉宮も樹も完全に油断していた時だった。
さっきまで怯えていたはずの康太が、正にヤケクソだと、近くに落ちていた鉄パイプを振りかざし襲い掛かってきていたのだ。
「何がぶっ殺すだ。笑わせんな。てめぇはオレが今ぶっ殺してやるよぉおっ!!」
振り下げた鉄パイプはわずかに杉宮からズレ、鴨居の後頭部へと向かっていく。
「カモ伏せろ!!」
杉宮は鴨居を助ける為に、とっさに自らの腕を伸ばした――
『バキャッ』