放浪カモメ
「えっ……?」
鴨居の頭上からあり得ない音が辺りに響いた。
鴨居はゆっくりと、その音が発生したであろう場所を見上げる。
「杉宮先輩!!」
そこには鴨居をかばった杉宮の腕。
なんと杉宮の腕は鉄パイプの形に窪んでしまっていた。
それが服越しにでも分かった。
「テメェ……」
何もせずに見逃したのに、兄貴に怪我を負わせた康太に、樹は我慢の限界を迎えた。
「やめろ樹!!」
もう振りかざした樹の拳は止まることなどできなかった。
一直線に康太の頬を打ち抜く――
『ボキィィィッ!!』