放浪カモメ
「カモ、大丈夫か?」
鴨居の真正面では杉宮と樹が心配そうに鴨居を見つめていた。
「良かった無事で。助けにくるのが遅くなっちまって悪かったな。」
鴨居の瞳に写ったのはあの時から寸分も変わらぬ杉宮の笑顔。
それは不良に囲まれていた時に、ずっと頭から離れることの無かった笑顔であった。
「杉宮先輩。オレ……おれ……」
その時、鴨居の瞳から綺麗な雫(しずく)が零れ落ちた。
「あ、あれ?おかしいな……うっ、泣くつもりなんか……ふっ、ないのに。」
雫は次々と鴨居の瞳からあふれ出て、細い列を作り出していく。
とめどなく流れる涙を鴨居は顔を覆い隠すように拭き取るが、涙が止まることはなかった。
「オレ、ずっと不安で。ずっと先輩の顔が頭から離れなくて……助けに来てほしくて。。。」
杉宮は手を差し出すと鴨居の身体を起こす。
「なぁ……カモ。」
鴨居がしっかりと立ち上がったのを見ると杉宮は手を離した。
そして――
『パァアンッ』と辺りに高い音が響き渡った。